聖書的契約(1)エデン契約

この記事では、「8つの聖書的契約」の中から「エデン契約」について、できるだけわかりやすく説明していきます。約15〜20分ほどでお読みいただけますので、ぜひ最後までお読み下さい。

エデン契約で学ぶ項目は、以下の6点です。

  • エデン契約の当事者
  • エデン契約の種類
  • エデン契約の条項
  • エデン契約の御言葉
  • エデン契約の現状
  • エデン契約の歴史的背景

それではさっそく、エデン契約の当事者は誰なのかを見ていきましょう。

目次

❶ エデン契約の当事者

エデン契約の当事者は、神とアダムです。聖書の神は人間と契約を結ばれます。その際、契約の当事者が誰になるのかは、神の一方的な選びによります。

神に選ばれたアダムは、エデン契約に際し「全人類の代表者」として立たされています。なぜならアダムが、神によって創造された人間で、全人類の祖先になる人物だからです。それゆえこの契約では「人類の父」としての責任を負うことになります。そして全人類は、アダムの行動の影響を受けることになります。

具体的には、エデン契約に対するアダムの行いが、人類の行いであるとみなされるということです。例えて言うなら、ある国の総理大臣が結んだ契約が、「全国民」に影響を及ぼすのと同じ理屈です。その総理大臣が全国民を代表して結んだ契約ですので、一国民が「私は、そんな契約を結んではいませんから関係ありません。」という訳にはいきません。

さてここで、アダムが神によって創造されたという点ですが、日本では創造論に触れる機会が少ないかもしれませんので、御言葉から確認しておきましょう。

創世記 1:7

神である主は、その大地のちりで人を形造り、その鼻にいのちの息を吹き込まれた。それで人は生きるものとなった。

引用元:聖書新改訳2017©2017新日本聖書刊行会

❷ エデン契約の種類

エデン契約の種類は、条件付きの契約です。聖書的契約には、2つの種類がありますが、一つは条件付き契約、そしてもう一つは無条件契約です。エデン契約の場合は、条件付き契約にあたります。

条件付き契約は双務契約とも呼ばれ、契約の当事者である神と人間の双方に義務が発生します。つまり、人間が条件を満たさなければその契約は破棄されるということです。ですから、エデン契約の場合は、アダムが条件を満たさなければ契約が破棄されてしまいます。

ちなみに、無条件契約は片務契約とも呼ばれ、契約の当事者の片方(神)だけに義務が発生します。つまり、人間が条件を満たさなくてもその契約は破棄されないということです。

❸ エデン契約の条項

エデン契約の条項は、全部で6つあります。エデン契約は条件付き契約ですから、条項の中にその「条件」が与えられています。そのほかの条項は、条件を満たすなら与えられるはずの「祝福」に関するものです。最初にこの「条件」を見ていきましょう。

条件:善悪の木からとって食べるな!食べたら死ぬ(創世記 2:17)

これは、エデン契約中の唯一の「禁止令」です。しかもこの禁止令には、「食べたら死ぬ」という警告がついていました。この禁止令は、神への従順を試すためのもです。

そして既に学んだように、この条項はエデン契約が有効であるための「条件」でもあります。つまり、この条件を満たさなければ、以下の5つの条項で約束されていた祝福が、与えられなくなるということです。

祝福1:子孫繁栄(創世記 1:28b)

神が地上を人が住む場所として与え、子孫を繁栄させてくれるという祝福です。

祝福2:地球の管理(創世記 1:28b)

神が人に、地球の管理者としての立場を与えてくれるという祝福です。

祝福3:動物の支配(創世記 1:28c)

神が人に、生き物を支配する権利を与えてくれるという祝福です。
ちなみに、命名するという行為は、支配権の行使を表しています。

祝福4:食物(創世記 1:29~30、2:16)

神が人に、十分な食物を与えてくれるという祝福です。 
エデン契約では、菜食主義という食物規定がありました。

祝福5:労働(創世記 2:15)

神が人に、労働の喜びを与えれくれるという祝福です。
当時の労働は苦しみを伴うものではありませんでした。

それではここで、エデン契約の条項を御言葉から確認していきましょう。

❹ エデン契約の御言葉

エデン契約を示す御言葉は、次の2箇所あります。創世記 1:26~31と、創世記 2:16~17です。

手元に聖書をお持ちでしたら、ぜひご自分の聖書を開いてお読み下さい。この記事では、右端の▼印をクリックしてお読みいただけます。

創世記 1:26~31

26 神は仰せられた。「さあ、人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう。こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう。

27 神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された。

28 神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ。」  

29 神は仰せられた。「見よ。わたしは、地の全面にある、種のできるすべての草と、種の入った実のあるすべての木を、今あなたがたに与える。あなたがたにとってそれは食物となる。

30 また、生きるいのちのある、地のすべての獣、空のすべての鳥、地の上を這うすべてのもののために、すべての緑の草を食物として与える。」すると、そのようになった。

31 神はご自分が造ったすべてのものを見られた。見よ、それは非常に良かった。夕があり、朝があった。第六日。

引用元:聖書新改訳2017©2017新日本聖書刊行会

創世記 2:16~17

16 神である主は人に命じられた。「あなたは園のどの木からでも思いのまま食べてよい。

17 しかし、善悪の知識の木からは、食べてはならない。その木から食べるとき、あなたは必ず死ぬ。

引用元:聖書新改訳2017©2017新日本聖書刊行会

以上の2箇所が、エデン契約を示す御言葉でした。

❺ エデン契約の現状

エデン契約は、アダムが禁止令を破ってしまった時点で破棄されてしまいました。そして、現在も破棄されたままです。すでに学んだように、エデン契約は「条件付きの契約」でした。条件付きの契約が、条件を満たさなかった時点で破棄されるのは当然の事です。

そして、禁止令に伴い警告されていた「死」がやってきました。その「死」は二段階で起こりました。第一段階は「霊的な死」で、神との関係が断絶する事を意味します。第二段階は「肉体の死」で、これは時間をおいて後から起こりました。

また、すでに学んだように、アダムの行為は全人類に影響を及ぼします。アダムは全人類の代表者でしたので、彼が犯した失敗は全人類の失敗とみなされてしまうのです。そこで人類は、条項にあった数々の祝福を失い、霊的には死んだものとなり、肉体的には死ぬ身となってしまいました。

それではここで、アダムが禁止令を破ってしまった出来事(アダムの罪)を、御言葉から確認しておきましょう。

創世記 3:1~8

1 さて蛇は、神である主が造られた野の生き物のうちで、ほかのどれよりも賢かった。蛇は女に言った。「園の木のどれからも食べてはならないと、神は本当に言われたのですか。」

2 女は蛇に言った。「私たちは園の木の実を食べてもよいのです。

3 しかし、園の中央にある木の実については、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と神は仰せられました。」

4 すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。

5 それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」

6 そこで、女が見ると、その木は食べるのに良さそうで、目に慕わしく、またその木は賢くしてくれそうで好ましかった。それで、女はその実を取って食べ、ともにいた夫にも与えたので、夫も食べた。

7 こうして、ふたりの目は開かれ、自分たちが裸であることを知った。そこで彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちのために腰の覆いを作った。  

8そよ風の吹くころ、彼らは、神である主が園を歩き回られる音を聞いた。それで人とその妻は、神である主の御顔を避けて、園の木の間に身を隠した。

引用元 : 聖書 新改訳2017 ©2017 新日本聖書刊行会

さて、続いては、エデン契約の歴史的背景を見ていきましょう。

❻ エデン契約の歴史的背景

エデン契約の歴史的背景を理解するため、エデン契約が結ばれた「時代」について見ていきましょう。ここでいう「時代」は、神学的な専門用語で「ディスペンセーション」と呼ばれています。

まずは、ディスペンセーションの定義を押さえておきましょう。

ディスペンセーションとは、神の計画が進展していく過程において出現する、明確に区分可能な神の経綸(けいりん:計画や統治の方法)のことである。

引用元: 中川健一先生著書「ディスペンセーショナリズムQ & A」P.27 ハーベスト・タイム・ミニストリーズ出版社発行、2019年4月1日 初版第1刷発行

神はご自身のご計画に沿って世界を統治しておられます。そして統治の原則が「段階」を経て移行していきます。この「段階」がディスペンセーション、つまり時代区分と呼ばれるものです。

7つのディスペンセーション

ここで、次の図表から「7つのディスペンセーション」(時代区分)の全体像を見ていきましょう。これによって、エデン契約の位置付けが分かるかと思います。

図表にあるように、人類の歴史は、1から7に向かって流れています。無垢の時代、良心の時代、人間統治の時代を経て、約束の時代、律法の時代へと進み、恵みの時代を経て、最終的に御国の時代へと進んでいきます。

エデン契約が結ばれたのは、聖書的時代の一番最初である「無垢の時代」でした。期間としては、アダムが創造されてから禁止令を破ってしまうまでの間です。その期間は、神を慕い求める性質だけで罪の性質はありませんでした。

禁止令を破るという不従順の罪を犯した後は、神の御顔を避けるようになってしまいました。神を慕い求める性質がなくなってしまったのです。もう無垢の状態とは言えません。

それで、エデン契約破棄と同時に「無垢の時代」は終わりを告げ、次の時代である「良心の時代」へと移り変わります。


ここで、「無垢の時代」に関する記事をご紹介しておきます。

8つの聖書的契約

このように、契約とディスペンセーション(時代区分)は深く関係しています。そこで、次の図表で「8つの聖書的契約」の全体像も押さえておきましょう。


エデン契約は、図表の左下にある1番目の契約です。1から8の番号は契約が結ばれた順番を示していて、時間の流れは左から右に向かっています。(点線の矢印や枝分かれしている線に関しては、必要に応じておいおい説明させて頂きます。)

❼まとめ

この記事では、エデン契約について、以下の6項目を見ていきました。

  • エデン契約の当事者
  • エデン契約の種類
  • エデン契約の条項
  • エデン契約の御言葉
  • エデン契約の現状
  • エデン契約の歴史的背景

これらの項目を通じて、エデン契約の全体像を把握して頂けたら幸いです。同じ学びをしても、理解の過程は人ぞれぞれ違うと思います。そこで、私の経験を共有させていただきます。

所感

私がエデン契約について学んだのは、ハーベスト・タイム・ミニストリーズ主催の聖書塾でした。それまでは、どうしてアダムの犯した失敗が私に関係あるのかが分かりませんでした。でも「人類の代表者」としての契約だったことが理解できた時点で腑に落ちました。

ところがアダムを騙した蛇の存在に関しては、ほとんど理解できていませんでした。でも、「天使論」と「サタン論・悪霊論」を学び、その時点でようやく分かりかけた感じがしました。あとは、エデン契約で約束されていた祝福が回復されることは、「黙示録」の学びで徐々に理解できてきました。

この記事を書くために、聖書塾で学んだことを復習することができて、とても祝福されています。また、自分が与えられた学びの中からいくつかでも共有できることは、大きな祝福です。

以下の中から、参考になりそうなものがあればぜひご活用ください。

参考

本格的な学びを希望される方のために、リソースページをご用意しています。ぜひご一読下さい。

最後まで一緒に学んでくださり、本当にありがとうございました。この記事が、あなたの信仰生活のお役に立てれば幸いです。

次回は、聖書的契約シリーズの(2)アダム契約について、ご一緒に見ていきましょう。

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